従業員が退職する際、労務担当者には多くの手続きが求められます。手続きの遅れや不備は、退職者とのトラブルに発展したり、法律違反になったりするリスクも。
今回は、円満な退職を実現するために、労務担当者が押さえておくべき手続きと注意点をまとめました。
1. まずは「退職届」を確実に受理する
退職届の提出は法律上の義務ではありませんが、従業員の退職意思を明確にする重要な書類です。トラブルを未然に防ぐためにも、必ず提出してもらいましょう。
・テンプレートを用意しておく: 書式は自由ですが、事前にテンプレートを用意しておくとスムーズです。就業規則に提出期限(退職日の〇日前など)を明記しておきましょう。
・退職理由を正確に把握する: 「一身上の都合」と記載されることが多いですが、妊娠、育児、介護、疾病が理由の場合は、離職票の作成時に必要になるため、正確な理由を記載してもらいましょう。
2. 社会保険と雇用保険の手続き
従業員の退職後は、速やかに社会保険と雇用保険の資格喪失手続きが必要です。手続きを怠ると、退職者が不利益を被ることがあるので注意しましょう。
社会保険(健康保険・厚生年金)
・保険証などの回収: 退職日までしか使えないことを伝えた上で、健康保険証、資格確認書などを回収します。扶養家族の分も忘れずに。
・資格喪失手続き: 退職日の翌日から5日以内に、管轄の年金事務所または事務センターに「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を提出します。
雇用保険
・資格喪失手続き: 退職日の翌々日から10日以内に、管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。
・離職票の交付: 退職者が希望する場合や、退職時の年齢が59歳以上の場合は、離職票を交付する手続きが必要です。
〇マイナポータルでの交付も可能に: 2025年1月からは、退職者が希望し、いくつかの条件を満たしていれば、マイナポータルに直接離職票が交付されるサービスが始まっています。この場合、企業から離職票を渡す必要はありません。
3. その他の重要手続きと注意点
退職証明書と源泉徴収票
・退職証明書: 従業員からの発行依頼があった場合は、退職後2年間は発行義務があります。発行を拒否すると法令違反になる可能性があるので注意しましょう。
・源泉徴収票: 退職後1か月以内に従業員へ交付する義務があります。交付を怠ると罰則の対象になります。
住民税の手続き
・特別徴収している従業員が退職する場合、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出する必要があります。
・退職月によって、残りの住民税の処理方法(一括徴収か普通徴収か)が異なるため、事前に確認しておきましょう。
退職時のトラブル防止策
・年次有給休暇の買い上げ: 原則不可です。ただし、消化しきれない有給休暇の買い上げは例外的に認められます。
・貸与物の回収と費用控除: PCや携帯電話などの貸与物は確実に回収しましょう。ただし、返却がないからといって給与から一方的に費用を控除することは法令違反となります。
まとめ
従業員の退職手続きは多岐にわたりますが、一つひとつを正確に進めることが何よりも大切です。チェックリストなどを作成して抜け漏れがないように管理し、スムーズな退職をサポートしましょう。