企業は従業員の健康管理に努める義務があり、法令により定期健康診断の実施が義務付けられています。
定期健康診断の実施
対象者
・常時使用する従業員:正社員、パート・アルバイト問わず、週の所定労働時間が正社員の4分の3以上で、かつ期間の定めのない契約の従業員、または期間の定めがあっても1年以上使用される予定で、かつ1年以上使用されている従業員が該当します。
・派遣労働者は派遣元企業に実施義務があります。
・育児休業中や休職中の従業員は、復職時に速やかに実施が必要です。
・従業員は受診を拒否できません。正当な理由なく拒否した場合は、就業規則に基づき懲戒処分の対象となることがあります。
健診項目
労働安全衛生規則で定められた項目を実施します。
費用・受診時間
・企業は健康診断の費用を全額負担する義務があります。法令で定められた項目以外の費用負担は任意です。
・受診時間の賃金支払いは企業の判断に委ねられますが、厚生労働省は支払いが望ましいとしています。
定期健康診断実施後の措置
1. 結果の通知
・異常の有無にかかわらず、受診者全員に結果を通知する義務があります。
・健康診断の結果は要配慮個人情報であり、適切な管理と利用目的の説明、同意取得が必要です。
2. 医療機関の受診、保健指導、二次健康診断の勧奨
・異常の所見があった従業員には、再検査や精密検査、保健指導を推奨します。
・脳・心臓疾患に関連する特定の項目に異常があった場合、労災保険の「二次健康診断等給付」により費用負担なしで二次健康診断や特定保健指導を受けることができます。
3. 医師等の意見聴取
・異常の所見があった従業員について、健康保持に必要な措置について医師(産業医など)の意見を聴取する義務があります。
・従業員50人未満の企業は、地域産業保健センターで無料で意見聴取が可能です。
4. 就業上の措置
・医師の意見に基づき、「就業制限」や「要休業」とされた従業員には、その実情に応じた就業上の措置を講じます。その際、従業員の意見を聴き、十分話し合うことが求められます。
5. 健康診断個人票の作成・保存
・健康診断の結果を記録した「健康診断個人票」を作成し、5年間保存する義務があります。
6. 定期健康診断結果報告(常時使用する従業員が50人以上の企業)
・常時使用する従業員が50人以上の企業は、定期健康診断結果報告書を管轄の労働基準監督署へ提出する義務があります。
・2025年1月より電子申請が義務化されています(やむを得ない場合は書面提出も可能)。
まとめ
定期健康診断の未実施や実施後の措置の不備は、罰金が科される可能性があります。また、安全配慮義務違反として企業が責任を問われるリスクもあるため、適切な計画と実施、そして事後措置の徹底が重要です。