平均賃金は、従業員の生活保障のために手当や補償などを算定する際の基準となる金額です。その計算方法は、月給制だけでなく日給制や時間給制など労働日数が少ない場合で異なり、実務上の複雑さが増す要因となっています。この記事では、労務担当者が知っておくべき平均賃金の基本的な考え方や算定方法を、具体的な事例を挙げて解説します。
平均賃金が必要になるとき
平均賃金は、主に以下の場面で必要になります。
- 休業手当: 会社の都合で従業員を休業させた場合に支払う手当
- 解雇予告手当: 予告期間を設けずに従業員を解雇する場合に支払う手当
- 年次有給休暇の賃金: 有給休暇中の賃金
- 災害補償: 業務上の災害により従業員が負傷・疾病・死亡した場合の補償
- 減給の制裁: 従業員に対する減給処分
平均賃金の基本的な計算方法
原則として、平均賃金は以下の計算式で算出します。
平均賃金 = 算定事由発生日以前3ヶ月間の賃金総額 ÷ その期間の総日数 (暦日数)
1. 算定事由発生日以前3ヶ月間とは
算定事由の発生日の前日から遡った3ヶ月間です。例えば、休業補償の計算をする場合、その月の締め日を基準にして3ヶ月間を遡って計算します。
2. 賃金総額とは
算定期間中に支払われた賃金のすべてが含まれます (基本給、各種手当、残業代など)。ただし、以下のものは含みません。
- 臨時的な賃金 (結婚祝い金、見舞金など)
- 賞与
- 通貨以外で支払われた賃金 (現物支給)
3. 平均賃金の算定に含めない期間とは
以下の期間は、賃金総額および総日数から除外します。
- 業務上の負傷・疾病による療養期間
- 産前産後休業期間
- 会社の責任による休業期間
- 育児・介護休業期間
- 試用期間
日給制・時間給制・出来高制の場合の特例
これらの賃金形態の場合、労働日数が少ないと平均賃金が低くなる可能性があります。そのため、以下の最低保障額が定められています。
最低保障額 = 算定期間の賃金総額 ÷ 算定期間の実労働日数 × 0.6
原則の計算方法と最低保障額を比較し、 高い方 を平均賃金として採用します。
最後に
平均賃金の計算は複雑で、ケースによって適用するルールが異なります。特に、日給制や時間給制の場合、最低保障額の適用を検討する必要があります。正確な平均賃金の算出は、従業員の権利を守る上で非常に重要です。この記事を参考に、平均賃金の計算方法を理解し、適切に運用してください。