ストレスチェック制度の基礎知識と実施手順

近年、従業員のメンタルヘルス不調による休業等が増加傾向にあり、企業における従業員の心理的健康の保持増進は重要な経営課題となっています。本稿では、ストレスチェック制度の基礎知識と、その導入手順について解説します。

ストレスチェックの概要

ストレスチェックとは、従業員が自身のストレス状態を把握するための質問票を用いた検査であり、メンタルヘルス不調の未然防止を目的として実施されます。従業員は結果に基づき、ストレスへの対処や専門家への相談等の行動を促され、企業は職場環境改善の基礎資料を得ることが期待されます。
質問票の様式は任意ですが、以下の3項目を含む必要があります。

  • ストレスの原因に関する項目
  • ストレスによる心身の自覚症状に関する項目
  • 従業員に対する周囲のサポートに関する項目

ストレスチェック制度の基礎知識

1.  義務化対象事業場: 常時使用する従業員数が50人以上の事業場に実施義務があります。50人未満の事業場は努力義務ですが、実施する場合は関連法令・指針を遵守する必要があります。従業員数の算定には、常時雇用している従業員が含まれます。事業場は原則として同一場所に所在するか否かで判断されます。

2. 対象従業員: 原則として全従業員が対象ですが、契約期間1年未満の者、通常の従業員の所定労働時間の4分の3未満の短時間勤務者は除きます。休職中の従業員への実施は必須ではありません。

3. 実施者: 医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士等が実施者となります。外部機関への委託も可能です。産業医が実施者とならない場合でも、衛生委員会への出席や実施状況の把握が求められます。

4. 実施頻度と報告義務: ストレスチェックは年1回実施する必要があります。実施時期は受検率を考慮し設定することが望ましいです。常時使用する従業員が50人以上の事業場は、ストレスチェックと面接指導の実施状況を労働基準監督署へ報告する義務があります。報告を怠った場合は罰則の対象となります。

導入前の準備

1. 企業方針の提示: ストレスチェック制度の実施目的を従業員に明確に示します。

2. 実施方法等の検討: 衛生委員会等で、具体的な実施方法、実施体制、役割分担を検討します。質問票の選定や、人事権を持つ者が関与できない事務作業の担当者を明確にする必要があります。厚生労働省が提供する質問票や実施プログラムも参考にできます。

3. 社内規程の作成と周知: ストレスチェック制度に関する社内規程を作成し、従業員に周知します。

ストレスチェック制度の実施手順

ストレスチェック制度は、ストレスチェックの実施、面接指導、集団分析の3つの段階に分けられます。

1. ストレスチェックの実施: 従業員が質問票に回答し、実施者または実施事務従事者が回収します。質問票は第三者や人事権を持つ者が閲覧できないよう管理する必要があります。

2. 結果の評価と通知: 実施者がストレス状況を評価し、面接指導が必要な従業員を選定します。結果は従業員本人に通知され、企業への結果提供は本人の同意が必要です。結果の保存は実施者が行います。

3.
 面接指導: 面接指導が必要とされた従業員が希望した場合、企業は医師に依頼して面接を実施します。医師の意見に基づき、労働時間短縮等の措置を講じ、面接結果は企業で5年間保存します。

ストレスチェックおよび面接指導の費用は企業が負担し、対応時間中の賃金支払いについては労使間で協議することが望ましいとされています。企業には、努力義務として集団分析の結果に基づいた職場環境改善が求められます。

企業が注意すべきこと

従業員の個人情報保護を徹底し、ストレスチェックの実施や結果によって従業員に不利益な扱いをすることは禁止されています。

おわりに

ストレスチェック制度は、従業員のメンタルヘルス不調を予防する上で重要な枠組みであり、事業規模に関わらずその重要性は増しています。企業は、今後の法改正や運用方針を注視し、従業員の健康管理に積極的に取り組むことが求められます。