賞与の支給は、従業員のモチベーション向上に欠かせませんが、労務担当者にとっては、社会保険料の計算や「賞与支払届」の提出など、重要な手続きが伴います。賞与にかかる社会保険料は、従業員の将来の年金額にも影響するため、正確な対応が求められます。
今回は、賞与支払届の手続きと、賞与にかかる社会保険料の計算方法について解説します。
賞与支払届の対象者と提出不要なケース
対象者:
賞与を支給した社会保険加入済みの全役員・従業員が対象です。育児休業中で社会保険料が免除されている従業員や、社会保険の資格を喪失した従業員も届出が必要です。
提出が不要なケース:
・1年間に4回以上支給される賞与: これらの賞与は毎月の給与とみなされ、標準報酬月額の対象となるため、賞与支払届は不要です。
・労働の対価ではない慶弔見舞金: 結婚祝いや出産祝いなどは賃金に該当しないため、届出は不要です。
賞与支払届の手続きの流れ
日本年金機構に登録されている賞与支払予定月の約1か月前に、賞与支払届の用紙が送付されます。
1.賞与を支給した時:
・提出書類: 健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届など。
・提出期限: 賞与を支払った日から5日以内。
・提出先: 事務センターまたは管轄の年金事務所。
・提出方法: 郵送、電子申請、電子媒体、窓口持参。
・注意点: 用紙に記載のない対象者がいる場合は追記が必要です。賞与が不支給の対象者がいる場合は該当欄に斜線を引いて提出します。
2.賞与を不支給とした時:
事業所全体の全役員・従業員に賞与を支給しない月も、「健康保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書」の提出が必要です。
3.賞与支払月を変更する時:
賞与支払月を変更した場合は、変更の事実発生から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届」を年金事務所に提出する必要があります。
賞与支払時の社会保険料計算方法
賞与にかかる社会保険料は、給与とは計算方法が異なります。
- 健康保険料: (税引き前の賞与総額 − 1,000円未満を切り捨てた額) × 健康保険料率
- 介護保険料: (税引き前の賞与総額 − 1,000円未満を切り捨てた額) × 介護保険料率(40歳以上65歳未満の従業員が対象)
- 厚生年金保険料: (税引き前の賞与総額 − 1,000円未満を切り捨てた額) × 18.3%(厚生年金保険料率)
【社会保険料計算の注意点】
- 年齢到達: 介護保険料は40歳到達月の前日(誕生日)が属する月から徴収開始、65歳到達月の前日(誕生日)が属する月から徴収不要です。
- 70歳以上の従業員: 厚生年金保険料の徴収は不要です。
- 賞与支払月に退職する従業員: 退職日が末日以外の場合は社会保険料を徴収しません。
- 産前産後休業・育児休業中の従業員: 社会保険料は徴収しません。
【社会保険料計算における賞与額の上限】
- 健康保険: 4月1日から翌年3月31日までの賞与の累計額で573万円が上限。これを超える場合は「健康保険 標準賞与額累計申出書」を提出します。
- 厚生年金保険: 1回(同月中に複数回支給された場合は合算)の賞与額で150万円が上限。
まとめ
夏季賞与の支給時期は、年度更新や定時決定、高年齢者・障害者雇用状況等報告書の提出など、労務担当者にとって重要な手続きが集中する期間です。
賞与支払届の提出期限は支給日から5日以内と短いため、迅速かつ正確な対応が求められます。賞与の計算から振り込み、各種手続きまでをスムーズに進めるためにも、事前に計画を立て、早めに準備を進めていくことをお勧めします。